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狼煙村の医師 |
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■浦野家代々の家業は医師 等覺寺住職のお話や現地の郷土史などによると、狼煙横山の住民のほとんどは百姓をしていた。それでは、浦野家の先祖も百姓をしていたのでしょうか。 ところが、平成17年5月15日に宮古浦野家の方と初めて電話でお話をしたときに、先祖は医師を家業としていたらしいという情報を入手しました。資料に残されている記述から浦野立三は間違いなく医者だったのですが、伝承では、「狼煙村時代、浦野家は代々医者で、加賀藩医をしていた」というのです。 勿論、この段階では、あくまでも伝承ですので、裏付けとなる証拠が必要です。しかし、私はこの話を聞いた時に、もし先祖が医者だったとすれば説明が付く点がいくつかあることに気が付きました。
■郡方医師の浦野柳吉 平成17年5月24日、金沢市立玉川図書館近世資料館の調査により、「加賀藩史料幕末篇下巻」に、郡方医師として「狼煙村」の「浦野柳吉」という人物がいた記録が残っていたことが分かりました。以下は該当箇所を抜粋したものです。これによると、浦野柳吉は、慶応元年(1865)4月に蘭方医黒川良安から種痘の方法を伝授された郡方医師ということが分かります。また、これは公文書ですので、「浦野」という苗字を公称していたようです。
当初、この資料を見た時点では、高祖父以前の先祖の俗名が分からなかったので、柳吉がどの世代の先祖に当たるのかを推測しました。 黒川良安が柳吉に種痘を伝授したのは慶応元年(1865)とありますが、過去帳によると、5世祖父の浦野與平次は、これ以前の安政5年(1858)に亡くなっていますので、この「柳吉」とは、私の高祖父(立三の兄)であると考えられます。
■浦野柳齊(柳吉・立三の父) 戸籍上、高祖父の父は、「浦野與平次」となっていました。一方で、高祖父の弟である立三の戸籍では、その父は「柳齊」という名前になっていました。おそらく通称が「與平次」で、俗名が「柳齊」だったのではないかと思います。高祖父の父の俗名が「柳齊」であることが分かれば、私の高祖父と浦野立三が本当に兄弟であることが確定できるのです。
この○の部分の文字については、私や妻は勿論のこと、住職も分からないということでしたが、平成17年6月11日、地元の図書館で古文書に関する資料を調べていた時に、古文書に見られる所謂「くずし字」として、上の○の部分に該当する文字が、「齊」という字である資料を見つけることができました。 過去帳に記載されていた字は、まさしく右図の「済(濟)」という字のくずし字の作りの部分とそっくりです。最初に過去帳を見たときには、どうみても「齊」という字など想像もできず、何とか読めるとすれば、「系」というような字に近いような気がしていました。浄土真宗東本願寺派の過去帳では、上記のように記述の形式が、 「@法名、A没年、B戸主、C続柄」となっていますので、もしかしたら今では使われなくなった親族の呼称で「柳系」というものがあるのではないかという可能性を探っていました(例えば、息子の子のことを「子」と「系」を合わせて「孫」と書くようなイメージです)。 しかし、実際にはそのような呼称は存在しなく、困惑していたところ、資料で「齊」のくずし字を見つけたのです。また、これに関連して、過去帳の記載の仕方には特徴がありました。記述の形式は「B戸主、C続柄」となっていますので、例えば、戸主の母親が亡くなれば、「与平次母」と書かれていますが、 戸主本人が亡くなった場合には、Cの欄には、戸主の俗称が書かれているのです。従って、上述の「釋無覚(与平次柳齊)」は当時、浦野家の戸主であった人物であるといえます。 さらに、過去帳の記録を年代的に整理した結果、与平次柳齊は、まさしく與平次柳吉・立三兄弟の父であることが分かりました。 これをもって、私の実家のある北海道の浦野家と宮古の浦野家は、江戸期の先祖を同じくするという証拠がようやく取れたことになります。石川、北海道、岩手という距離を置きながらも、150年もの時間の壁を越えることができたのには、移動や情報の伝達が簡便になった今の時代ならではの成果を感じてなりません。 ちなみに、「斉」(旧字体は「齊」)と、「斎」(旧字体は「齋」)は、全く異なる意味を示す別の漢字のようです。具体的な例を挙げますと、「一斉に」という言葉を「一斎に」とは書くことはなく、逆に、「書斎」を「書斉」と書くこともありません。 当家の先祖である浦野柳齊は、戸籍上でも、過去帳においても双方共に、下が「二」の「齊」であります。 <参考文献>
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