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墓石の発見

 5月7日の午前中は、珠洲市立中央図書館で狼煙地方の歴史についての資料収集に費やしました。お昼には、狼煙町の宿泊先である 「民宿てらい」に行きました。民宿てらいを切り盛りしているおばさんは、 事前に小坂様から簡単な事情説明があったようなのですが、それでも私たちの話を最後までじっくり聞いてくれました。午後は、 墓所調査と当家の菩提寺を訪問します。いよいよ現地調査も真髄に入ってきました。

■当家のものと思われる墓石を発見
 午後は、菩提寺の訪問という大仕事を予定していました。お寺は横山の丘を越えて、外浦の斜面を降りた所で、 ちょうど狼煙町と川浦町の境界に位置していました。そこで、昨日、市役所で発覚した当家の墓地は、横山から禄剛崎灯台へ続く丘の上の遊歩道付近に位置していることが分かったので、 横山地区の東側から、この遊歩道を通って歩いて行ってみることにしました。部屋で小休息を済ますと、狼煙町の広域地図と番地区分地図を用意し、首からコンパスをぶら下げて、いざ出発です。余談ですが、私は大学時代オリエンテーリング部に属していた経緯もあり、コンパスを用いた地図読みには自信がありました。

 丘の道は最初ゆるやかに下ったあと茂みに入り、北になだらかに曲がりながら、急激に林の中の坂を上る形になり、その深い茂みを抜けたところで、高台の開けた平地が現れるようになっていました。土地台帳の記録と番地区分の図面を照らし合わせてみると、先祖の墓地は、深い茂みの中の坂を上る途中に、遊歩道の南側にあるように描かれています。狼煙町の方の話では、丘の下の舗装道路ができたのは昭和時代に入ってからのことで、それまではこの遊歩道が狼煙と川浦をつなぐ主要道路だったそうです。詳しい経緯は分かりませんが、遊歩道として認定される時に、当家墓所の土地の一部を石川県が買収したということではないかと思っています。
 遊歩道が林の中に入り、道が坂を上り始めると、注意深く辺りを見回しました。結構、藪が深いので、慎重にゆっくり進みました。そして、茂みを調べながら、坂がより急になってきたところを上っているとき、それは突然目の前に現れたのです。

 深い茂みの中に横たわっている直方体の石がありました。草を掻き分けてみると明らかに墓石とわかります。そして、非常に長い年月の間、 無縁仏であったことを暗示するかのように、横に倒れたその身はびっしりと苔をまとい、所々に見える墓石の表面は深く黒ずんでいました。墓石の脇にはとても大きな藤の老木があり、土から突き出した何本もの根に墓石が飲み込まれそうになっていました。墓石は倒れ、そのときの衝撃なのか数箇所割れてしまっていましたが、墓石の土台もしっかりをありました。また、墓石には屋根にあたる石があったことに驚きました。屋根付きのお墓ですから、江戸時代以前のものである可能性があります

 墓石の倒れた角度的に、横面に彫られている文字は見えませんでした。正面にはかろうじて苔に覆われていない部分に、 「阿○陀佛」という文字が見えます。おそらく「南無阿弥陀仏」と彫られているのでしょう。そのとき、お墓を起こしてみようかとも思いましたが、もしかしたらお寺の住職がお墓についても何かご存知かもしれないので、 とりあえずそのままにして、お寺に伺ってみることにしました。土地台帳の住所に合致する場所に墓石があるのですから当家のものと思ってほぼ間違いありません。私たちは足早にお寺に向かって歩き始めました。もしこれが本当に当家の墓石だとしたら、奇跡としか言えません。

 尚、右上の写真は5月8日に墓石を修復する前に撮影したものです。一番上の写真は、墓石の隣にあった大きな藤の老木と一緒に撮影したものです。根元右側に横たわった墓石があるのが分かりますでしょうか。このように当家の墓石は茂みの中に100年以上もひっそりと眠っていたのでしょうか。
 上から2番目の写真は墓石に近づいて撮影したものです。倒れた墓石や土台が緑の苔に覆われているのが分かります。黒い石で組まれた大きな土台が藤の老木ごとお墓を取り囲んでいます。また、写真右側に墓石の屋根になっていた石があるのも分かります。一番下の写真は墓石の正面を撮影したものです。
 この日の夜、河崎様と電話で話すことができたのですが、狼煙にはこのように無縁仏になってしまったお墓がいくつかあるということを聞きました。私の先祖同様に明治期に村を離れた家のものなのかもしれません。


                       

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